nagato湯本温泉 長瑞庵

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温泉につかりながら語り合える話題と、温泉旅館のような居心地を提供したいブログ

あの日経の記事はマズイのか?

日本に住んでいると、ほぼすべての地域で何かしらの災害に遭遇する危険性がある。災害のたびに聞く言葉に「想定外」というものがある。温暖化が進むと台風も強力になるとかで、想定外を想定内にする必要はあるだろう。想定外ながら行政側に賠償命令が下った宮城県石巻市にある大川小学校の津波訴訟では、学校という特殊環境のために児童の安全を確保する義務があるという判断(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191011/k10012122981000.html)がなされたが、日頃から高い意識を持つことや防災対策に抜かりがないよう遂行するのはどの環境でも変わりないだろう。

さて、タイトルの記事とは↓のことである。

www.nikkei.com

国は防災までも放棄するのか?といったタイトルと非会員で読める範囲での内容であるために、一気にTwitterのトレンド入り。しかし、Twitterで「国頼み 全文」と検索すれば要約したものは見つかり、実際はそこまで馬鹿げた記事ではないことはわかる。しかし、フェイクが広まり訂正版は広まらない傾向にあるTwitterでは真実を伝えるのは難しいかもしれない。

冒頭に、特別警報や氾濫が予想できるか?という問いかけがある。箱根の24時間積算雨量が6~700mmになった時点で特別警報を警戒する必要はあったかもしれないが(日降水量が700ミリを超えるケースは10件ほどしかなく、その後も雨が降り続くことが予想できた)、堤防の決壊などは想定できないケースがほとんどだろう。雨に強い/弱い地域というのはあるので、単純に雨量だけで判断してはいけないのだが。

行政主導のハード面の防災は昔から取り組まれており、ソフト面でも河川カメラやSNSでの情報発信など、情報化社会に対応しつつある。しかし、住民である我々も避難すべきときは避難をし、食糧備蓄や避難所までの経路確認など自ら行動しなければならないのは事実だろう。防災に100%というのは残念ながらないだろうし、命を守るために行動すべきだ。

中央防災計画によれば今年修正される内容に、自分の命を自分で守ることと、地域の災害リスクを知ることがある(http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/39/pdf/39_siryo1.pdf)。記事全文の内容の一部は有識者会議で報告されたこの内容に解説を加える形と推察され、間違った内容とは言えない。市民レベルでも防災について意識して取り組む必要性があるのは、先述の具体例の通りだ。

ハード面での限界があることは理解できる。ハードとソフトの組み合わせで防災・減災に努める必要がある。今回の場合、堤防によって財産を守ってもらい、自ら避難することで生命を守るというハードとソフトの組み合わせがイメージしやすい。この場合、記事のタイトルにある、「堤防には頼ない」というのでは、堤防への信頼を放棄して防災ではソフト面にのみ注力することになってしまう。例えば今回威力を発揮した八ッ場ダムや緊急放流は行ったものの避難の猶予時間を十分に提供した城山ダムといった現場の努力は一切不要となってしまう。堤防に頼ない、頼らなくても自分の命と財産を守るように働きかけるのが、この記事の役目だったのではないだろうか。中央防災計画で示されたソフト面の強化を伝えている記事であることを考えるとそのように誘導すべきで、タイトルはミスリードだろう。

地名の由来や地域にある石碑、地形を見れば、過去の災害履歴がわかることがある。今年3月には「自然災害伝承碑」という地図記号が新設され、防災の意識を地図から高めようとしている。地理の授業で習う地形や地図というのは、こういう時に役立つのではないだろうか。

一文字の威力の大きさと、住居を構える際のリスクを知る機会となり、教訓になる台風であった。

 

いい加減本題に入る前の謎の前置きやめたいけどやめられない